紺野道昭通信

Ⅰ.経営者の“判断軸”に踏み込む④ 私が『許せない』と感じる基準(定期発信-Vol.243)

人に言われて今でも忘れられない言葉があります。

言葉以上にしんどかったのは、こちらの事情や思いを見ようともせず、一方的に悪いと決めつけられたことでした。

ああ、この人は味方ではないのだな、とそのとき感じたのを覚えています。

 

私は過去を引きずらないタイプです。

忘れっぽいところもありますし、終わったことは終わったこととして次に進む性格です。

 

ただ、それでも残るときがあります。

それは、人として許せないと感じたときです。

 

・恩を返さない

・感謝がない。

・筋が通らない

 

このように人としての土台が崩れていると感じたときです

 

そう、能力の高低はどうにでもなります。

経験不足なら育成すればいいのです。

ただ感謝の気持ちがなかったり、受けた恩を当たり前だと思ったり、都合のいい時だけ人を使ったり、そういうことは、私は好きになれません。

そこには人としての問題があるからです。

人は、追い込まれている時に、誰が味方かではっきりします。

私もそうでした。

苦しい時に、誰が自分の側に立ってくれたか、誰が見て見ぬふりをしたか、誰が事情も知らずに物を言ったか。

こうした出来事が深く残っています。

これらが価値観をつくっていくのだとも思います。

 

私の場合、一番の味方はやはり妻でした。

だから私は、今でも「親より妻」「会社では社員とその家族を大切にする」という思いが強いのです。

苦しい時に支えてくれたのが誰だったのかを忘れていないからです。

経営者として何を守るかと聞かれたら、私は迷わず「人」と答えますが、根本にはそうした個人的な経験があります。

 

許せないという感情は、裏を返せば「何を守りたいか」ということです。

私は、会社の信用を守り、人と人との信頼を守り、支えてくれる家族を守り、社員が胸を張って働ける環境を守りたい。

だからこそ、それを台無しにする言動や姿勢には敏感になるのです。

もちろん、私も完璧ではありませんから、ときに感情が先に立つこともあります。

それでも自分の中では一本筋が通っています。

それは、人として正しいかどうかです。

経営の判断軸というと、数字や戦略だけに見えるかもしれません。

もちろんそれも大事です。

しかし最後の最後は、その経営者が何を許せなくて、何を守りたくて、どこに怒り、どこに感謝するのか、そこに全て現れるのだと思います。

 

私は、感謝のない会社をつくりたくありません。

恩を忘れる組織にしたくありません。

人が人を雑に扱う文化をつくりたくありません。

だからこそ、自分自身も感謝を忘れず、守るべきものを見失わないようにしたいのです。

 

経営者の判断軸とは、結局はその人の生き方そのものです。

何を許せず、何を大切にするのか。

そこがぶれなければ、多少迷っても、最後は正しい方向へ戻ってこられるのです。